ヤムヤム果実

kaeru_icon_5.jpg いそのん劇場アーカイブ

ここに、12の色の12の形の【ヤムヤム果実】があります。
どれも熟れ熟れの果実です。

2021年この年、いそのんは世界を見てまわることができないでいました・・・・・・・・・・・・

061kim01.gif理由はみなさまご存知の感染症対策です。
ヒトとヒトを乗り継いで繁殖するウィルスに過剰にチャンスを与えない方がいい。
そういうわけで、遠くまで、ましてや海外まで出かけることはできなかったのです。

でも、いそのんはヒト以外の生き物も大好き。
身近で行き来できるところ、主に紀伊半島の湿地、海岸、山の中に目を向け、ヒトの居ない場所で新しい発見をたくさんしたのです。

例えば、ある河口ちかくの湿地帯では、みんなでリズムを合わせてハサミを振る小さなカニの国をみつけました。
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                   おそらくチゴガニくん一族

例えば津々浦々の海岸線を見てまわって、打ち上がる貝殻のパターンから、海の中の様子を推察したり、殻の成長の法則を考える楽しみをみつけました。
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砂に棲んでる貝たち  イタヤガイ  マテガイ ツメタガイなどなど
打ち上がるカイガラはカイのゴイガイ(ご遺骸)な〜んて

そんなふうに、いそのんはこの2021年を過ごしていました。

そしてある日・・・・・

061kim02.gifその日、日が暮れて晩ご飯も済んだところで、いそのんはでんでんむし探しに山にでかけました。

ここのところ、身近なところででんでんむしの部族をいくつか発見、同じ場所に棲む幾種類もの部族ごとに、慣習や性格が違うことなども少しづつわかってきたところです。

でんでんむしって夜行性なんですよ。
なので懐中電灯を持って暗いところを探すと、昼間より活発なでんでんむしと出逢うことができます。

そういうわけで、いそのんはときどき暗くなってから山の木立の中にわけいるのです。
山の中ではときどき、ガサガサと何か動物の動く音がします。
ドキドキもしますが、同じ山の住人、
嬉しい気持ちの方がおおきいのです。


その日は、いつもと違うルートを通り、いつもと違う木立のなかに入って行きました。
すると、地面に落ち葉のたまった大きなくぼみをみつけたのです。

なんとなく変な気がしたので、足元を確かめながら降りていくとちょっとびっくり。

そこには人ひとり入れそうな大きな穴があったのです。

061kim03.gif山の木立の暗闇の中。
落ち葉の溜まったおおきなくぼみの中に、人ひとり入っていけそうな穴を発見。
これはぜひとも中を見てみたい。

でも、今は夜です。
洞窟に入るときに、大事なことがあります。
できれば、暗い時には入らない方がいいのです。

どうせ中は暗いじゃん?昼でも夜でもいっしょじゃないの?

そう思うでしょう?
でもちがうんです。
夜だと、そこに出口があってもわからないのです。
昼だと、穴の口が近づくと、光があることでそこが外だとわかるのです。

その状況の違い、想像できたでしょうか?
ほら、昼と夜ではぜんぜん違うでしょう?

いそのんは、次の日、明るい時に出直すことにしました。

その日はでんでんむし探しもやめて、早めにおふとんにはいりました。

でもわくわくしてなかなか寝れなかったんですけどね

061kim04.gif次の日の朝、
いそのんは元来とてもお寝坊なんですけど、その日ははやばやと目がさめました。

ヘッドライトと、ロープとハーネス。
携帯用の折りたたみヘルメットとカラビナに下降器、そしてリュックを持って、昨日の場所に行ってみることにしました。
地中でどこまで電波が届くかわかりませんが、一応スマホも持って行きます。
怪我とかしたら、救急車を呼ばなくてはいけませんからね。

昨日の場所には、やはり地面にぽっかりと開いた穴がありました。

ロープを穴にたらしてみると...
穴の底まで垂直に50メートル、穴の底は光がとどかないので様子はわかりません

いそのんは、頭に付けた懐中電灯をつけて、ゆっくりと降りていきました
しばらくすると、足の裏が地面をとらえました
穴の底についたのです。

061kim05.gifロープに下降器をつけて、ハーネスとつなぎ、するすると降りた穴の底は広いホールになっていました。
足元を確かめて、一度灯りを消してみます。
見上げるとはるか上に地上の光が見えます。
手元足元に目をおとすと、ここにまでは光が届いておらず、全く何も見えません。
まるで目にフタをしたような暗さです。

しばらく、無の世界を楽しもうとそのままでいると
目を開けているのか閉じているのかさえ分からなくなってきます

さあ、時間はすぎていきます。
あかりをつけて、その先がどうなってるか見に行ってみましょう。

おもむろに懐中電灯をつけると、そこには起伏に富んだ岩の造形がありました。

そして、ホールの先につづいている穴が3っつ。
その真ん中を選んで、先に進む事にしました。

061kim06.gif思いおこせば、もうずいぶん前のことになりますが、いそのんには忘れられない洞窟の思い出があります。
その洞窟はタイの北部、バンコクから列車とバスを乗り継いで、
最後はバイクの後ろにひとりづつ乗せてもらうというバイクタクシーでたどりついた村にあります。

そもそもがイギリス人の知人、ハグリットに会うという旅で、洞窟のことはあまりしらずにその場所にいきついたわけです。
それがその日、洞窟に入るメンバーがひとりふたり足りないのだと、参加者をつのっているカナダ人の男性にであい、「それはぜひとも」と仲間に入れてもらったのです。

自然のままの洞窟の全長4kmのルートをヘルメットとライトとバッテリーをもって歩く、這う、もぐる、登る、とびこえるという経験は、それ以来忘れられない思い出になっています。
その時に見た、真っ白な結晶の壁と、滴るしずくのきらめき、そしてそのしずくがつたわる道筋に成長した波のような結晶の壁や鍾乳石、石筍。

たったひとりで降りて来たこの洞窟でも、あの美しい景色が見られるのでしょうか?

061kim07.gif3つの真ん中の穴は、太くなったり細くなったり。
地の裂け目は、縦向きだったり横向きだったり。
両手両足を使って下っていきます。
足元をよく見ていると、最初は時々みつかったコウモリの糞が、下にいくほど見つからなくなっていきました。

あまり行くと、もどりが大変。
そう思っても、ひとつ狭いところをぬけるたびに、暗闇の先に光が届き、次の景色がもうすこしだけ、もうすこしだけ、とさそいをかけます。

地面の裂け目に落ちないように、とがった岩や低い天井で頭を打たないように、気をつけながら一生懸命進んでいるうちに、辺りの景色はあの時の洞窟のようになってきました。
壁や天井は懐中電灯でちかちか光り、波うったような真っ白な結晶がつらなって、つぎからつぎへと美しい姿を見せます。

それだけではありません。
なんだか少しづつ暑くなってきたような気がします。

061kim08.gifつぎつぎに現れる魔法のような景色を見たくて暗い穴をすすむうち、気づくとなんだかあたりが暖かい。
それに、なにかの気配がします。

自分の住む地上では、ふっと風上からとどいた香りで、「イノシシが居る?」とか「タヌキが居るかも?」とか推察できたりします。
見えてなくても飛ぶ羽音から「カメムシ?」「オオスズメバチ?」とか、わかったりします。

でもこんなに地中深く、気配だけではなにが居るのか全然推察できません。
懐中電灯であたりを照らしてみても、たくさんの石筍や鍾乳石がつくる影が光につられてうごきまわるばかりです。

気になりだすと、感じる気配はますます強くなり、暑さもどんどん強くなっていきます。

どうしたら、この気配の正体をみつけられるんだろう?と、いそのんは灯りを消してみることにしました。
目にたよってもダメだと思ったんですね。

061kim09.gifここは地上からずいぶん離れた地の底。
灯りを消すと、あたりは真っ暗。
灯りを消したばかりの目の中には懐中電灯の光の形のさらに黒い闇のようなものが見える気がします。

自分が怖いと思うと、感覚は鈍ります。
怖いという気持ちには好い事がない気がする。
いそのんはそんなふうに思います。

おしつぶされそうなほどの闇の中。
いそのんは穏やかな気持ちで、ゆっくりと目が慣れるのをまちました。

真の闇なら目がなれても何も見えないはず、なのに、すこしづつ脳の中に緑や青や紫のつかみどころのない光がおどる気がします。
そしてその光の中に奇妙な姿の人影のようなものが、ちらりちらりと見えはじめました。

結局目にたよってしまいました。
それにしても目ってすごいですね

061kim10.gif目が暗闇に慣れるにつれ、奇妙な人の姿はすこしづつはっきりと見え始め、そしてそのぼんやりとした光の出所が熱のでどころと同じなことがだんだんわかってきました。

奇妙な人は私の方をじっとみつめています。
「逃げるべきか?襲うべきか?それとも受け入れるべきか迷っている。」
そんな感じに見てとれます。

こんな時はあせってはだめ、その場に腰をおろし、その生き物との間の空気が和らぐのを待ちます。

安心したらきっと去っていくのだろうな、とにっこりすると、
おどろいたことに相手もにっこり。
その時とつぜん、相手のわくわくした好奇心がいそのんの心の中に流れ込んできました。

そしていそのんにはわかったのです。
「ついておいでよ」って言ってる?

061kim01.gif奇妙な人は、おおきな石筍の影の小さな裂け目に入り込むと、いそのんがついて来るのをたしかめて、ひょこひょこと両手両足をつかって進んでいきます。

いそのんもあっちのでっぱりをもち、こっちの岩だなに足を乗せ、奇妙な人の動きをまねて、ひょこひょこついていきました。

奇妙な人は先へ先へと進みながら、その長い指先で壁からときどき何かをつまんで、袋のようなものに入れています。

いったい何をとっているのだろう?と思いながらもついていくと、いきなり目の前がぱあっと広くなり、そこではたくさんの奇妙な人たちが、何か作業の真っ最中だったのです。

そしていそのんは気づきました。
果物が岩からなっている
岩の間からニョキニョキと生えた美しい結晶の間から、上から垂れた鍾乳石の間から色とりどりの果物が生えている。
大きさはまちまちだけどもプチトマトかクルミぐらい?もうちょっと小さいのも大きいのもある?
奇妙な人たちはそれを長い指で摘み取り、袋に入れていたのです。

そしてここまで案内してくれた奇妙な人と、ぱらぱらと集まってきた他の奇妙な人たちは、その美しい実を食べてみせ、いそのんにもどうぞと差し出してくれたのです。

061kim02.gif言葉はわからなくてもいそのんには、彼らが何をいわんとしているかなんとなくわかります。

それがどうしてなのか?
いそのんには、思いあたることがあります。

いそのんの生業はガラス職人です。
作品をつくるときガラスを火であぶりながら、その目の前のガラスが今どう動きたいのか、ガラスの声を聞くことに慣れています。
そしてガラスは石からできているのです。

いそのんはこの奇妙な人たちは石か?大地か?いずれにせよ地面の精霊みたいな存在なのだと気がつきました。

精霊たちは、いそのんの伸ばした手に石から摘んだばかりの実をのせてくれました。
そして自分たちも美味しそうにその実をパクパク食べています。

061kim03.gif奇妙な人が手にのせてくれた実はキラキラでピカピカでジューシーで美味しそうに見えます。
だけど、いそのんは口に入れようとして気がつきました。
この実はカチカチで石のようです。
それもそうです、ヤムヤムの実は地中の石から生まれた石の果実なのです。
食べたいけど食べられない
ごちそうしてくれようとするが私には食べられない

でも思ったんです。
食べられなくても、この実が欲しい。

いそのんは奇妙な人、地の精霊たちにお願いしてみました。
もって帰りたいのだけど、少しわけてもらえませんか?

奇妙な人たちは、顔をみあわせて、それからこちらをむきました。

私たちの大事な食べ物なので、持って帰る分まではさしあげられない。
だけど、蟲がついたぶんならどうぞポケットに入れてください。

061kim04.gifそうして、もって帰ってきたのがこの12個の【ヤムヤムの果実】
すべてをCo展の町長さんにおあずけしました。
そしてこのクリスマスにはのべ12人の方におわけしてもらうことになりました。isonon_s.gif

2021/12/26 23:13 Update
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